
蝦夷松・スプルース:建具材の定番
蝦夷松、別名スプルースは、シベリアの厳しい寒さのもとで育つ針葉樹です。力強く成長した太い幹は、緻密で均一な木目を持ち、加工すると均一な幅広の美しい表情を見せます。この木目の美しさゆえに、古くから日本の家屋で建具材として重宝されてきました。
蝦夷松が持つ落ち着いた色合いと木目は、日本の伝統的な空間に自然と調和し、上品な雰囲気を作り出します。特に鴨居や敷居、障子など、繊細な加工技術を要する部分に最適です。障子に使えば、外の景色をやわらかく室内に取り込み、落ち着いた光で空間を満たします。また、鴨居や敷居に用いれば、部屋全体の雰囲気を格調高いものへと引き上げます。
蝦夷松の耐久性は、長年にわたり日本の家屋を支えてきた歴史が証明しています。湿気や虫害にも強く、適切に手入れをすれば、何世代にもわたって使い続けることが可能です。古民家などで見られる、年を重ねて飴色に変化した蝦夷松の建具は、家の歴史を物語る大切な一部となっています。
現代の住宅でも、蝦夷松の持つ魅力は決して色褪せることはありません。自然素材ならではの温かみと、洗練された美しさは、現代の生活空間にも違和感なく溶け込みます。フローリング材として使用すれば、足触りの良い快適な空間が生まれます。また、壁材に用いれば、部屋全体に落ち着いた雰囲気を醸し出し、安らぎの空間を演出します。まさに、日本の伝統建築を支え、現代の生活にも寄り添う、名脇役と言えるでしょう。