かき落とし

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仕上げ

かき落とし仕上げ:壁に表情を添える

かき落とし仕上げとは、建物の壁に表情を与える、味わい深い仕上方法です。壁材となるモルタルや漆喰などを塗った後、それが完全に乾ききる前に、専用の道具を使って表面を薄く削り取ることで模様を付けていきます。乾き具合を見極めることが非常に重要で、早すぎると模様が付きにくく、遅すぎると削ることが難しくなります。この絶妙なタイミングを見計らうのが、職人の腕の見せ所と言えるでしょう。 この仕上げの最大の特徴は、表面に独特の凹凸が生まれることです。平らな壁とは異なり、光が当たることで陰影が生まれ、独特の風合いが空間に生まれます。この陰影は、見る角度や時間帯によって変化するため、壁面に動きを与え、単調になりがちな壁に奥行きを与えてくれます。また、使用する材料や道具、削り方によって、様々な模様を作り出すことができます。コテやブラシ、金櫛など、道具の種類や使い方次第で、繊細な模様から大胆な模様まで、多様な表現が可能です。そのため、和風建築だけでなく、現代的な建物にも広く用いられています。 かき落とし仕上げは、外壁だけでなく内壁にも用いることができます。玄関やリビングなど、家の顔となる場所に用いることで、印象的な空間を演出することができます。また、店舗や公共施設など、様々な建物にも取り入れられており、空間に個性と深みを与えています。近年では、職人の手仕事による温かみが見直されており、かき落とし仕上げのような、味わい深い壁の表現方法がますます注目を集めています。自然素材ならではの風合いと、職人の技術が融合した、世界に一つだけの壁は、住まいに特別な価値を与えてくれるでしょう。