味わい深い こたたき仕上げ
こたたき仕上げとは、コンクリートや石材などの表面を専用の道具で叩いて、独特の風合いを出す仕上げ方法です。この道具はこたたき用の蚤と呼ばれる小さな鏨で、職人が丁寧に表面に無数の小さな刻み目を付けていきます。この無数の小さな刻み目が、こたたき仕上げならではの凹凸を生み出し、独特の質感を作り出します。
つるりとした滑らかな表面とは異なり、こたたき仕上げは素朴ながらも力強い印象を与えます。コンクリートや石材といった素材そのものの持ち味を最大限に引き出し、重厚感や深みを感じさせる風合いを生み出すのが特徴です。また、表面に細かい凹凸があることで、光の反射が複雑になり、陰影が強調されます。そのため、見る角度や時間帯によって、様々な表情を見せてくれます。
古くから日本の建築で使われてきたこたたき仕上げは、近年その魅力が見直され、再び注目を集めています。昔ながらの和風建築はもちろん、現代的なデザインの建物にも取り入れられるようになってきました。例えば、玄関アプローチや外壁、塀などに用いることで、空間に落ち着きと趣きを添えることができます。また、床材に用いると、滑りにくく安全な歩行面を作ることもできます。
素材そのものの色合いを生かすため、着色はあまり行いませんが、色のついたモルタルを使用したり、仕上げ後に撥水剤を塗布することで、耐久性を高めるなどの工夫が凝らされることもあります。このように、こたたき仕上げは素材の持ち味を生かしながら、様々な表情を作り出すことができる、魅力的な仕上げ方法と言えるでしょう。