アスベスト問題と住宅リフォーム
石綿とも呼ばれるアスベストは、天然に産する繊維状の鉱物です。この鉱物は、極めて細い繊維で構成されており、肉眼での確認は困難です。かつては建材として多用され、住宅をはじめ、ビルや工場など、様々な建築物に使用されていました。その理由は、アスベストが持つ優れた特性にあります。
まず、アスベストは耐火性に優れています。火に強く、燃えにくい性質を持つため、火災時の延焼を防ぐ効果が期待できます。次に、アスベストは断熱性にも優れています。熱を伝えにくいため、建物の保温効果を高め、冷暖房効率の向上に役立ちます。さらに、アスベストは耐久性にも優れ、長期間にわたって建材としての機能を維持できます。加えて、アスベストは比較的安価で入手できるため、コストを抑えることもできました。これらの特性から、アスベストは屋根材、壁材、断熱材、保温材など、様々な用途で使用されていました。
しかし、後にアスベストが人体に深刻な健康被害をもたらすことが明らかになりました。アスベストの微細な繊維を吸い込むと、肺の組織に繊維が蓄積し、長期間にわたって炎症を引き起こします。これにより、肺がん、中皮腫、アスベスト肺といった深刻な病気を発症する危険性があります。特に中皮腫は、アスベスト曝露との因果関係が強く疑われる病気です。これらの健康被害の深刻さと、発症までに長い潜伏期間があることから、アスベストは現在、製造、使用、譲渡などが法律で厳しく規制されています。古い建物を取り壊す際などは、アスベストの飛散を防ぐための適切な対策が必要となります。