栃の木:家具材の魅力
栃の木は、トチノキ科トチノキ属に分類される落葉広葉樹です。漢字では「栃」もしくは「橡」と書きます。北海道から九州まで、日本各地の山地に広く分布しています。特に、沢沿いなど湿り気のある場所を好み、渓谷のような水辺の近くでよく見られます。
栃の木は、非常に大きく成長する木として知られています。樹高は通常20メートルから30メートルほどになりますが、中には40メートルを超える巨木も存在します。その堂々とした姿は、山の中でもひときわ目を引きます。春から初夏にかけて、5月頃から6月頃には、まるでロウソクを立てたような形をした、白い円錐形の花を咲かせます。この花は多くの昆虫を惹きつけ、山の生き物たちに恵みを与えます。
秋になると、栗に似た実をつけます。この実は縄文時代から人々に利用されてきました。栗のような見た目ですが、そのままではアクが強く、食用とするにはアク抜きなどの下処理が必要です。灰汁抜きには、長時間水に晒したり、灰汁を使うなど、手間と時間のかかる作業が必要です。しかし、適切な処理を施すことで、貴重な食料となります。古くから人々は栃の実を餅に混ぜたり、栃餅にして食べてきました。
栃の木は、木材としても大変重宝されています。木肌は滑らかで光沢があり、木目は美しく、独特の風合いを持っています。そのため、家具材として広く利用されてきました。特に、テーブルや椅子、箪笥などの高級家具に用いられることが多く、その美しい木目と丈夫さで、人々に長く愛されています。また、栃の木は加工もしやすく、彫刻にも適しているため、様々な工芸品にも利用されています。