石材仕上げの決め手:びしゃん叩きの魅力
びしゃんとは、石材の表面を美しく整えるために用いる、特別な槌のことです。槌の表面には、びっしりと小さな突起が並んでおり、この様子がびしゃんの名前の由来となっています。まるで碁盤の目のように規則正しく並んだこの突起は、「目」と呼ばれ、その数によって槌の種類が区別されます。例えば、突起が25個(5×5)のものは「5枚」、64個(8×8)のものは「8枚」と呼ばれ、職人は石材の種類や仕上がりのイメージに合わせて、これらのびしゃんを使い分けています。
びしゃんを用いることで、石材の表面に独特の風合いを付けることができます。突起の数が多いびしゃんを使うと、よりきめ細かく滑らかな仕上がりになり、少ないびしゃんでは、荒々しく力強い印象になります。びしゃんで仕上げられた石材は、独特の柔らかさと温かみのある雰囲気を醸し出し、空間に落ち着きを与えます。また、表面に凹凸ができることで、滑りにくくなる効果も期待できます。そのため、玄関の通路や浴室など、水で濡れて滑りやすい場所にも安心して使用できます。
びしゃんを使った石材の仕上げは、古くから日本家屋で用いられてきました。現代の建築においても、その独特の風合いを生かし、床材や壁材、装飾など、様々な場面で活用されています。職人の手によって丁寧に仕上げられた石材は、時を経るごとに味わいを増し、建物の風格を高めてくれることでしょう。びしゃんは、単なる道具ではなく、日本の伝統的な技術と美意識を伝える、大切な道具と言えるでしょう。