家づくりの心臓部:297間竿
日本の伝統的な木造建築において、家づくりの要となるのが「かねじゃく」と呼ばれる「間竿」です。中でも「にごしち」と呼ばれる二百九十七粍の間竿は、家一軒分の寸法を正確に記した、いわば家の設計図となる定規です。大工はこの間竿を用いて、柱や梁といった家の骨組みとなる木材の長さや位置を墨付けによって木材に書き写していきます。
この二百九十七粍の間竿は、家の強度や美観を左右する重要な役割を担っています。柱や梁などの寸法が正確でなければ、家が傾いたり、歪んだりする原因となるからです。また、日本の伝統建築では、木材の接合部に複雑な仕口や継手が用いられますが、これらも間竿によって正確に位置決めされます。仕口や継手の精度が家の強度や耐久性に直結するため、間竿の正確さが家の寿命を左右すると言っても過言ではありません。
二百九十七粍の間竿は、一見するとただの細長い板切れのように見えますが、そこには先人たちの知恵と経験が凝縮されています。家の寸法を決める基準となる「モジュール」が刻まれており、これによって家の各部材の寸法が調和のとれたものになります。また、地域によって異なる気候や風土に合わせた独自のモジュールが用いられることもあり、その土地に最適な家づくりが可能となります。二階建ての家を建てる場合は二本の間竿が作られますが、いずれも家の寸法を決める上で欠かせないものです。
現代ではコンピューターを使った設計が主流となっていますが、伝統的な木造建築においては、今もなお間竿が重要な役割を果たしています。それは、単なる道具ではなく、日本の建築文化を象徴する存在であり、先人たちの技術と精神が込められた、まさに家づくりの魂と言えるでしょう。この二百九十七粍の間竿は、未来へと受け継いでいくべき貴重な文化遺産です。