建物の移動

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工法

曳き家:家の引越し

曳き家とは、建物を壊さずに、そのままの形で別の場所へ移動させる技術、あるいはその技術を持つ職人のことを指します。まるで家が引っ越しをするように移動する様子から、その名が付けられました。家屋を解体して建て直すよりも、費用を抑えられる場合があることや、思い出深い建物をそのまま残せるといったメリットがあります。 曳き家を行う際には、まず建物の周囲を掘り下げ、基礎から切り離す作業を行います。その後、建物の下に鉄骨の梁やローラーなどを挿入し、油圧ジャッキなどの機械を使ってゆっくりと持ち上げます。移動には、レールを敷設してその上を滑らせたり、大型の台車に載せて運搬したりする方法が用いられます。移動先は、同じ敷地内である場合もあれば、別の土地へ運ぶ場合もあります。 曳き家の歴史は古く、日本では古くから神社仏閣の移築などで用いられてきました。現代でも、古民家の保存や、土地の有効活用などを目的として行われています。建物の大きさや形状、構造、そして周辺環境や移動距離などによって、作業内容や費用は大きく異なります。そのため、綿密な計画と、高度な技術を持った職人の存在が不可欠です。 曳き家は、単に建物を移動させるだけでなく、建物の歴史や思い出も一緒に運びます。新しい土地で、家は再び息を吹き返し、家族の暮らしを見守っていくことでしょう。古き良きものを大切にしながら、新しい生活を築きたいと願う人々にとって、曳き家は魅力的な選択肢と言えるでしょう。