
キャビネット図:家具設計の簡略図法
収納家具の図面を描く技法の一つに、箱のような形をした家具を簡略化して表す「収納家具図」というものがあります。この図面の見方は少し特殊で、正面は実際の家具と同じ形で見えますが、側面や上面は奥行きがわかるように、四十五度の角度で傾斜して描かれています。
この「収納家具図」を使う大きな利点は、家具の全体像を一枚の図で把握できる点です。正面、側面、上面を別々に描く必要がなく、一つの図の中に形状と奥行きが表現されているため、誰が見ても直感的に家具の形を理解することができます。特に食器棚、本棚、テレビ台など、箱型の家具をデザインしたり、設計図を作成する際には、この図法が非常に役立ちます。複雑な形状を簡略化することで、設計者と職人間でスムーズな情報伝達が可能になり、製作ミスを防ぐことにも繋がります。
以前は、製図板と定規を使って手書きで作成するのが一般的でしたが、近年ではパソコンで正確に描くことが主流となっています。専用の設計ソフトを用いることで、寸法を正確に入力し、より精密な図面を短時間で作成することができるようになりました。また、三次元の立体モデルを作成し、様々な角度から家具を確認することも可能となり、設計の自由度も格段に向上しています。このように「収納家具図」は、昔ながらの手法と最新の技術の両方が活用されている、家具作りには欠かせない図法と言えるでしょう。