
シナノキ:合板に最適な木材
シナノキは、アオイ科シナノキ属に分類される落葉性の広葉樹です。東アジア原産の木で、日本だけでなく、中国や朝鮮半島などにも広く分布しています。日本では、北海道から九州まで、全国各地の山野に自生し、里山など人里に近い場所でも見かけることがあります。
シナノキは大きく成長する木で、樹高は20メートル以上にも達することがあります。樹皮は灰褐色で、縦に浅い溝が刻まれています。葉はハート型で、縁にはギザギザがあり、秋には黄色く色づきます。6月から7月にかけて、淡い黄色の小さな花を房状に咲かせます。この花からは質の高い蜂蜜が採れ、蜜源植物として養蜂家にも重宝されています。花の後には、小さな球形の果実ができます。
シナノキの材は、白っぽい色合いで、木目が細かく、柔らかく加工しやすいという特徴があります。そのため、古くから様々な用途に利用されてきました。彫刻や細工、合板、鉛筆の軸木、マッチの軸木、木屐、アイスクリームのへらなど、多岐にわたる製品の材料として使われています。特に、柔らかく均質な材質は彫刻に適しており、仏像や版木などにも用いられています。
シナノキ材は、流通する際に様々な名前で呼ばれることがあります。シナ、アカシナ、アカジナといった呼び名の他、リンデン、マダといった名前でも流通しています。これらの呼び名は、地域や樹種、木材の色合いなどによって使い分けられています。例えば、樹皮が赤みを帯びているものはアカシナと呼ばれています。また、リンデンという呼び名は、英語名である「Linden」が由来となっています。このように、様々な名前で呼ばれていますが、いずれも共通の特徴として、柔らかく加工しやすいという点が挙げられます。この特性から、シナノキは私たちの生活に欠かせない、有用な樹木と言えるでしょう。