違い棚:和室の粋な収納
違い棚とは、日本の伝統家屋で見られる、床の間の脇に設置される飾り棚のことです。段差のある棚板が特徴で、その名の通り、棚の板の高さが「違う」ことから「違い棚」と呼ばれています。主に書院造という格式高い和室で見られ、床の間と一体となって、その空間の格調を高める役割を担っています。
違い棚は、ただ物を置くための棚ではありません。掛け軸や花瓶、香炉といった美術品や調度品を飾ることで、和室に奥行きと趣を与え、季節感や家主の趣味を表現する場となります。例えば、春には桜の枝、秋には紅葉の葉を飾ったり、お気に入りの茶碗を置いて客人をもてなしたりと、その時々に合わせた演出が可能です。
棚板の高さが異なることも、違い棚の大きな特徴です。この段差があることで、様々な大きさの物を飾ることができ、立体的な美しさを生み出します。また、床の間の脇に配置されることが多い違い棚は、床の間の掛け軸や生け花と調和しながら、互いを引き立て合う効果も持っています。床の間と合わせて一つの絵画のように構成することで、見る人の心を和ませ、落ち着きのある空間を作り出します。
違い棚は、天袋、地袋とともに床脇を構成する要素の一つです。天袋は違い棚の上部に設けられた収納戸棚、地袋は違い棚の下部に位置する引き出し式の収納です。これらと組み合わせて用いることで、収納の機能も充実し、より洗練された和室の空間を生み出します。違い棚は、単なる家具ではなく、日本の伝統的な美意識を体現する存在と言えるでしょう。