猫間障子

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室内

猫間障子:古き良き日本の知恵

日本の家屋で古くから見られる障子。光を柔らかく通し、部屋を明るくするだけでなく、通気を良くし、夏は涼しく、冬は暖かい空気を保つ役割も担ってきました。この障子に、小さな工夫を加えたものが猫間障子です。猫間障子とは、その名の通り、猫が自由に出入りできるよう、障子の一部に小さな扉を設けたものです。 昔の家屋では、猫は家の中でも外でも自由に過ごしていました。猫が家の内外を自由に行き来できるようにと、この猫間障子が考え出されました。障子の開け閉めを猫に頼る必要もなく、人は障子を閉めたままでも、猫は小さな扉から出入りできたのです。これは、人と猫の双方にとって、大変便利なものでした。冬は、せっかく温まった部屋の暖かい空気が外に逃げるのを防ぎ、夏は、風通しを良くしつつ、虫の侵入を防ぐことができました。小さな工夫ですが、人と猫が快適に暮らすための知恵が詰まっていると言えるでしょう。 現代の住宅では、壁にペット用の小さな扉を設置するのが一般的になっています。しかし、この猫間障子は、その先駆けと言えるでしょう。猫と人が共に暮らす上で、障子という日本の伝統的な建具に猫用の小さな扉を設けるという発想は、日本人の動物に対する優しい気持ち、そして、自然と調和して暮らそうとする知恵の表れと言えるでしょう。猫間障子は、日本の住文化の奥深さを感じさせる、ささやかで心温まる工夫なのです。