織部板

記事数:(1)

室内

織部板:床の間の粋な演出

織部板とは、床の間の上部に水平に設置される、幅の狭い板のことを指します。多くの場合、幅は約二十四センチほどの柾目板が用いられます。柾目板とは、木の年輪に対して垂直に切り出した板のことで、反りや狂いが少ないという特徴があります。この織部板は、床の間の正面、廻り縁と呼ばれる縁取りの装飾材のすぐ下に取り付けられます。 茶室や和室といった、日本の伝統的な様式の部屋において、床の間は、掛け軸や花を生けるなど、その部屋の中でも特に重要な場所です。そして、この織部板は、床の間の格式を高め、荘厳な雰囲気を醸し出す上で重要な役割を担っています。 織部板という名前の由来は、安土桃山時代の茶人として名高い、古田織部が好んで用いたことに由来すると言われています。古田織部は、自由な発想と型破りなデザインで知られ、茶道具や建築にもその個性を遺憾なく発揮しました。織部焼と呼ばれる、独特の風合いを持つ焼き物も、彼の代表作として広く知られています。 織部板もまた、古田織部の美意識を反映したものであり、飾り気のない簡素さの中にも、確かな存在感を放つ佇まいが特徴です。床の間に飾られる掛け軸や花、そして、床の間そのものの雰囲気と調和しながら、織部板の素材や色合いは慎重に選ばれます。木材の種類や木目、そして、漆塗りや着色といった仕上げ方によって、様々な表情を見せる織部板は、床の間の雰囲気を大きく左右する重要な要素と言えるでしょう。茶道の精神である侘び寂びの世界観を、より一層深く感じさせるための、静かで奥深い魅力を秘めた存在、それが織部板です。