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工法

快適な住まい:土壁の魅力

日本の伝統的な家屋で見かける土壁は、幾重にも土を重ね塗りすることで作られます。その構造は、まるでミルフィーユのように層を成しており、それぞれの層に重要な役割があります。まず、壁の骨組みとなるのが「竹小舞」です。竹小舞は、細く割った竹を格子状に編んで作られます。この竹小舞が、土壁の土台となるのです。竹小舞の上に塗られるのが「荒壁土」と呼ばれる土です。荒壁土は、砂や繊維質のものを混ぜ合わせた土で、これを竹小舞にしっかりと塗り込みます。この荒壁土を塗る工程を「荒壁」と言い、土壁作りの最初の段階であり、後の工程の土台となる重要な工程です。荒壁が乾いてくると、表面に細かなひび割れが生じることがあります。しかし、これは問題ではなく、むしろ土壁の強度を高める効果があります。次に「大直し」と呼ばれる工程に移ります。大直しでは、荒壁の上にさらに土を塗り重ねて、表面を平らに整えます。この工程で使用される土は、荒壁土よりもきめ細かい土が用いられます。大直しによって、土壁の強度が増し、より滑らかな表面になります。大直しの後には「中塗り」を行います。中塗りは、大直しでできた表面をさらに滑らかにするための工程です。この工程で使用される土は、大直しよりもさらにきめ細かい土が使われます。中塗りを丁寧に施すことで、土壁の仕上がりが美しくなります。最後に「仕上げ」と呼ばれる工程で土壁は完成します。仕上げでは、中塗りで仕上げた表面に、最後の仕上げの土を薄く塗ります。この仕上げ塗りに使用される土は、非常にきめ細かい土で、職人の技術によって丁寧に塗り重ねられます。こうして、滑らかで美しい土壁が完成するのです。それぞれの工程で使用される土の種類や配合、そして職人の経験と技術によって、土壁の耐久性や仕上がりの美しさ、風合いが大きく左右されます。土壁は、日本の風土に適した、優れた建材と言えるでしょう。