踏込み床

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室内

踏込み床:くつろぎの和空間

踏込み床とは、日本の伝統的な家屋に見られる、床の間の種類の一つです。床の間というと、掛軸や花瓶を飾る、少し格式ばった場所という印象を持つ方も多いでしょう。確かに、床の間は来客をもてなす際に使われることが多く、家の顔とも言える大切な場所です。しかし、すべての床の間が同じように格式が高いわけではありません。踏込み床は、一般的な床の間とは少し違った、落ち着いた雰囲気を持っています。 その一番の特徴は、床框(とこがまち)がないことです。床框とは、床の間の周りを囲む木の枠のことです。一般的な床の間にはこの床框があり、畳よりも一段高くなっているため、足を踏み入れることはできません。しかし、踏込み床には床框がなく、畳と同じ高さに板が張られています。そのため、床の間の部分に足を踏み入れることができるのです。この構造上の特徴から、「踏み込む」ことができる床の間という意味で、「踏込み床」と呼ばれるようになりました。 踏込み床は、そのくつろいだ雰囲気から、茶室や書院のような改まった場所よりも、普段の生活で使う居間などによく用いられます。家族がゆったりとくつろげる空間を作るのに、踏込み床は一役買っていると言えるでしょう。また、踏込み床には、「ふんごみ床」や「ふんごみ」といった別名もあります。地域によって様々な呼び方がされているため、初めて聞くという方もいるかもしれません。しかし、いずれの呼び名も、「踏み込む」ことができるという、踏込み床の特徴をよく表しています。 踏込み床は、床框がないことで生まれる独特の開放感と、畳の温もりとが調和した、日本家屋の良さを存分に味わえる場所です。もし家屋の改築などで床の間を作る機会があれば、踏込み床も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。